『家が街並みを進化させる』新川設計事務所 新川貴久様のパンセ

大阪市内の閑静な住宅街に、白を基調とし等間隔にラインが入った外壁と、切妻屋根がモダンさを感じさせるO様邸が佇みます。この建築を手がけたのは、大阪市を拠点に持ち、自然素材を活用した注文住宅や店舗など多彩な空間を設計される新川設計事務所。所長 新川貴久様にお時間をいただき、建築士を志すきっかけとなったストーリーや、建築に「木」を取り入れている理由についてお話しを訊きました。

O様邸

1階の大半を土間とし、2階にLDKをゾーニングしたO様邸。広々とした約7㎡の土間は「階段を上がっていただかなくても、ソファーを置いて気兼ねなくお話ができるような場所にしたい」というお施主様の想いから生まれたのだとか。2階に貼ることを想定していたウエスタンレッドシダーのパネリングも、あえて土間に貼り、O様邸を訪れる人の心を癒します。

天井にはウエスタンレッドシダーの羽目板を採用。濃淡を活かして仕上げたことにより、この空間の意匠性を高めます。

2階のLDKには、道に面した西側の木製高窓に加え、南東にもハイサイドライトを設置したことで、光が降りそそぐ明るい空間に。床には、北海道の豊かな土壌で育ったタモを採用いただきました。こうした自然を身近に感じる仕掛けには「家の中にいても外(建築の「外」そして自然などを意味する「外」)とのつながりを感じてほしい」という新川様の想いが込められています。

メキシコ、フロリダの街並との出会

学生時代はテニスのプロ選手を目指していたという異色の経歴を持つ新川様。フロリダ、メキシコを巡るなかで出会った建築物に惹かれ、帰国後一から建築を学び、2018年に新川設計事務所をご設立なさいました。

「プロを目指すためにメキシコやフロリダで1年ほど過ごしたことがありました。そこで、日本にはない“窓と外のつながりが美しい街並”に魅了され建築に興味を持つようになったんです。例えば、家の外観が道路に遮断されているメキシコは、室内に入ると想像を超えて開放的。一方フロリダは、家と家との間が広く、庭一面に敷かれた芝が美しい。そういった建築がどうして日本にはないんだろうと疑問に思い、設計の道に進むことを決めました」

メキシコを代表する建築家ルイス・バラガン邸。外観は遮断されているが、室内は大開口から光が差し込む開放的な空間に。

Photograph by 世界建築巡り

新川設計事務所が掲げる“Evoluciona el ambiente”(エボルシオナ エル アンビエンテ)=“環境を進化させる”というコンセプトにも、新川様が旅路で出会った街並が建築を通して波及しほしいという願いが込めているのだそうです。

「せっかく家を建てるなら、自分が関わった建物の周辺環境もよりよくなるといいなと思います。外観からでも、周りに住まう方に『あの家のように感じのよい印象にしたい』と意識してもらえるような、良い影響を与えれる住まいになってくれると嬉しいです」(新川様)

木を用いて家をよりよく進化させる

新川様と弊社とのお付き合いは10年を超えます。継続して建築に「木」を取り入れていただいている理由について次のように教えてくださいました。

「建物は人が住んでこそ生きるように思います。人は所有欲を持っているから、触れるところに愛着が出やすい。付き合っていくなら、しっかり手をかけて、大事にしなきゃだめだよねっていう気持ちがないと家は長持ちしないと思うんです。それに木目風や木目調といったものより、本物の木の方が気持ちがいいですよね」

3階の床全面にも北海道産のタモをご採用いただきました。

O様邸に採用いただいた木製玄関ドアも、フローリングの北海道産のタモも、人と同じように手をかけ愛でていけば、味わい深く、美しい表情へと変化してゆきます。

この先、この家や環境はどんな進化をしていくのか。そんな期待を胸に過ごす家族の時間は、とても豊かに違いないと新川様のお話を伺って感じました。今回の取材に際し、快く受けていただいた、新川様そして新川設計事務所の皆様、本当にありがとうございました。(hieshima)

▪弊社納材商品
オリジナル木製玄関ドア(チーク)防火タイプ
木製回転窓 防火仕様
北海道産タモ節無(120巾)無塗装
WRCパネリングクリアグレード

▪会社情報
新川設計事務所-Evoluciona el ambiente-
大阪府大阪市生野区生野西1-14-3 須栄広長屋 – 宙 –
HP:https://www.arakawasekkeizimusyo.com/