CHANNEL ORIGINAL

各種自然素材の紹介や住まい方を提案します

チャネル通信 第30回

現場名:MST






 

この住宅の敷地は、間口は約5mと細長く、西以外の東南北を隣接する住宅に囲まれた約32坪の土地でした。
一見、ハンディキャップを抱えた土地のように思いました。でも、なぜそもそも狭く感じるのか、土地を測った数にとらわれず、もう一度この土地を見てみました。

この細長い土地の先にある行き止まり。

この行き止まりがあることで、私たちはこの土地を狭く感じ、また暗くも感じるのではないか。では行き止まりを失くせばどこまでも広がっていくのではないかと考えました。

次に、土地だけを見るのではなく、もっと視野を広げて土地を取り巻く周辺環境まで広く見聞し考えることで見つかるものもありました。

それは、土地の上空を遮るものがないこと、隣接の住宅を越えた高さから緑豊かな公園や大きな庭園を抱えた寺社が見えること、また、目には見えなくとも聞こえてくる近くの小学校や、保育園からの元気良い音でした。

狭そう・・・、広そう・・・など、ヒトは実際に測らなくても目で見たり、耳で聞いたりして空間の広がりを予感することができます。

この住宅は外からは西側のみが見えます。そこで住宅の外観は敷地に合わせて細長く間口の狭いまま構成し、そのまま内に広がる空間を予感してもらうようにしています。
ですが、実際の内側はその予感を良い意味で裏切るように、広がりを感じる様々な趣向を取り入れています。光や焦点をずらして目で感じる広がり。壁をずらして耳で感じる音の広がり。

ヒトが空間の広さを把握するための様々なものをずらして配置することで、行き止まりをあいまいにして、空間のさらに先にも空間が広がっているような予感が生まれるようにしています。

空や隣地に向けて様々にずらした窓は、外からの様々な光と影や音を室内へと伝えてくれます。

季節によって変わる太陽、ちょっとした通りすがりの雲、公園の木々のざわつき、近くの小学校・保育園の行事毎の音、いつも変化し続ける外の環境。

そんな刻々と変化する外の環境を敏感に伝えることで、室内はいつも決まった表情をみせないどこまでも行止まりのない移り変わりが続いていきます。

普段の階段は、最後の階で行き止まりになります。
そこで階段を2階からさらに屋上テラスへとつなげることで、階段がそのまま空へと抜けてゆくように続いています。

日々、経年変化する木を内と外に使うことで、表情にも行止まりのない住宅になりました。

■建築概要
現場名:MST
建築場所:愛知県
用途:専用住宅
(木造在来工法:2階建ペントハウス)

■ご採用商品
外装:ウイルウォール
玄関ドア:T&Gパネル(節有)