“まともな賃貸”は必要か? 小泉木材が手がける高性能賃貸〈Kizuki Terracehouse 桜台〉が示す、答えとその未来。

横浜駅から車で約30分の好立地に位置する、神奈川県横浜市青葉区。
富士山や丹沢山を望む高台の住宅地に、高性能賃貸住宅〈Kizuki Terracehouse 桜台〉が2025年1月に誕生しました。

本建築を手がけたのは、横浜市都筑区を拠点とする〈小泉木材株式会社〉様(以下、小泉木材)です。経営理念に『100年後の子供たちに責任を持ち、豊かにする』を掲げ、断熱等級7・UA値(平均)0.25を標準仕様とした高性能住宅を展開しています。

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「住宅の選択肢って、まともな戸建てか、安い戸建てか、安い賃貸くらいじゃないですか。なぜか日本には“まともな賃貸”が無い」――そう語るのは、小泉木材、そして本建築の事業主である〈株式会社Kizukiホールディングス〉の代表取締役を務める小泉武彦様です。

2020年頃から加速した土地代・住宅建築費の高騰により、横浜市青葉区で小泉木材の注文住宅を建てるには1億円以上が必要な状況に。限られた世帯にしか自社のリソースを提供できないことに危機感を抱き、賃貸プロジェクトの構想を始めたといいます。

小泉様
「エリアマネジメントを担う工務店が、一部の人たちにしか価値提供ができないというのはあまりにも無責任だと感じていました。なので、賃貸プロジェクトで僕たちは“この町に暮らす選択肢を変える”と表明し、まともな賃貸をつくりにいったということですね」

オーナーの収益最大化に焦点が当てられがちな賃貸住宅市場に、一石を投じる本プロジェクト。
小泉木材が培ってきた高性能住宅の知見と実績を活かし、高い性能とオーナー利益を両立させるビジネスモデルを構築した〈Kizuki Terracehouse 桜台〉は、意匠と性能の両面で優れた建築を表彰する〈日本エコハウス大賞〉第9回において、見事グランプリを受賞されました。

今回は現地に訪問させていただき、賃貸プロジェクトの経緯や想い、製品選定のこだわりについて代表取締役の小泉様にお話を伺いました。

「まともな賃貸」という選択肢をつくる

小泉木材が賃貸プロジェクトの構想を始めたのは2022年。
約3年の歳月を経て、“子供たちの未来を支える”新しい賃貸住宅が形となりました。

小泉様
「小泉木材の賃貸プロジェクトは、子育て支援が目的なんです。今って、何でもお金がすごくかかるじゃないですか。そうなると、子供が我慢をしないといけない状況が生まれるわけです。習い事や体験活動といった機会提供が満足にできない。だから、僕たちの建築の力で光熱費を下げる。入居者の方には、光熱費で浮いたお金をお子さんへの機会提供にあててくださいねと、事前に伝えているんです。そうすれば、子供たちの可能性を広げてあげることができるし、ここで育つ意味があると思うんです」

小泉様
「お子さんが大学卒業の日を迎えたら、僕がチャイムを鳴らして『出てください』とお願いに行きます。それを事前面談で伝えたら、みなさん苦笑されてましたけどね(笑)。でも、次の子育て世帯の方に入ってもらわないといけないので、お子さんが巣立った後の住まい(ミドル・シニア世代向けの賃貸住宅)も準備しているところです」

小泉様
「僕は団塊ジュニアと呼ばれる世代で、大学を卒業するときには就職氷河期だったんですね。よく『失われた30年、40年』と言われますが、僕たちからすると、ずっと失われている感覚なんです。誰も助けてくれない、僕たちの人生って一体何なんだろうと考えることもありますよ。でも、苦しみを味わったからこそ、知っているからこそできることがある。僕らの子供たちに同じ思いをさせてはいけないと思うようになってから、経営理念にも『子供たち』や『未来』というキーワードを入れるようになりました。社内でも、子供たちの未来にとって良いことであれば積極的にやっていいというルールを設けているんです」

賃貸だからこそ、使うものにこだわりたい

家の快適性を重視する場合、「高性能な戸建てを建てる」か「高性能なマンションを購入する」か。
現代では、多くの方がそのどちらかを選ぶのではないでしょうか。

Kizuki Terracehouse 桜台〉は賃貸住宅でありながら、UA値:0.20W/㎡・K、C値:0.2㎝/㎡(断熱等級7 / 一次エネルギー消費量等級6)という高い性能を実現しています。また、漆喰壁、国産の無垢フローリング、トリプルガラスの高性能サッシ、外付けブラインド、第一種熱交換換気システムなど、賃貸ではなかなか見られない建材・設備が多数採用されている点も特徴です。実際に室内へ足を踏み入れると、上質な空間と室温の安定感に「本当に賃貸なのか」と驚きを隠せませんでした。

小泉様
「賃貸ってオーナーの利益を重視する傾向があるので、それに沿った提案をするメーカーさんも多いんです。この物件をつくるときも、いろんな方が商品提案に来てくれました。その中で『小泉社長、賃貸ならこのスペックで十分ですよ』と言われることもあって。僕が『ちなみに、どんな家に住んでるんですか?』と聞くと、『賃貸で、冬は寒いです』と答えるんです。それに対して『あなたたちがもっとまともな提案をすれば、その寒い家を変えられるじゃないですか』って突っ込むという(笑)」

小泉様
「表面的なことではなく、信念を持っているか。根っこの考えが合うかどうかですかね。やっぱり、僕は人から物を買いたいんですよ。だって、僕たちがつくっている家には人の暮らしがあって、そこには温かみも感情もある。そういうものをつくっている人間に物を売るのに、対話もなくカタログを見せて終わりって、何のための提案なんだろうって思ってしまいますね」

小泉様
「もちろんコストも大事ですが、地域工務店で家を建ててもらう最大のメリットは“地域経済にお金が回る”ことなんです。大手ハウスメーカーのように生産拠点を海外に置くケースもありますが、それでは日本がどんどん貧しくなってしまう。僕は、“日本が貧しくなっていく流れを、家づくりで止めたい”と思っているので、できる限り国内の製品を選ぶようにしています。この建物で言うと、フローリングは北海道産のクリ、外壁は屋久島の杉を使いました。南面以外の窓はドイツ製ですが、これは性能面を考えたうえで(現状では)日本に同等品のものはないと判断したためです」

フローリング 採用商品「北海道産クリ節無フローリング」

窓(南面以外) 採用商品「UNILUX IsoPlus(ユニルクス イソプラス)」

問題提起としての外壁デザイン

外壁には、弊社の屋久島地杉材を全面にご採用いただきました。
ルーバー加工を施した屋久島地杉にウッドロングエコを塗装することで、竣工直後でありながらすでに数年の時を経たような落ち着きある佇まいに。周囲に自然と溶け込む外観に仕上げられています。

小泉様
「世界自然遺産として知られる屋久島ですが、その背景には人間が深く関わってきた複雑な歴史がありますよね。人工林の荒廃もそのひとつです。だけど、そうした歴史や文化が多くの人々を魅了し、観光資源として支えている。僕も山を愛する人間として(島内の)宮之浦岳に憧れを持っていましたし、光と影の両面を含めて、どこか華やかに感じていた部分があったと思います」

「でも、あるとき、チャネルの小林さんから屋久島地杉プロジェクト*を紹介してもらって、プロモーションビデオを見たんです。そこで知ったのは、屋久島の森が今もなお課題を抱えていること。そして、それに真正面から取り組んでいる人たちがいるということでした。その後、実際に島を訪れたんですが、林業関係者の方々がもがき苦しみながらも熱い想いを持って活動されている姿を目にして。『この複雑な現実や課題を、自分の地元の人たちにも知ってもらいたい』という想いから、問題提起の意味も込めて、外壁に屋久島地杉を使おうと決めました」

外壁 採用商品「屋久島地杉」

建物の価値は、未来の子供たちが決める

Kizuki Terracehouse 桜台〉の専用サイトには、こんな言葉が掲げられています。 
“Kizukiは その街角に立つ100年後の子供たちから溢れる笑顔に願いを込めて この賃貸住宅を建設します。”

小泉様
“建築の力をまともに使えば、未来は変えられる”という思いで、この建物をつくりました。すぐ近くに小学校があるんですけど、そこに通う子供たちの原体験、つまり“当たり前”の中に、僕たちが『まともだ』と思う建築があったら未来を変えてあげられるかもしれないじゃないですか。子供たちが大人になったとき、小泉木材の住宅仕様が自然と選ばれたらいいですよね」

「あと、僕の魂はしばらくここに置いておくつもりでいるんです。100年後の子供たちが『この建物って良いよね』って思ってくれたらやっと成仏できる(笑)。もちろん、みなとみらいの赤レンガ倉庫だって築114年(※2025年時点)ですから、100年って簡単じゃないことは承知しています。でも、本当に価値があるのなら、もし壊れても復元しようと思ってくれる人たちがいるはずなんです。だからこそ、『この建物があって良かった』って未来で思ってもらえるように力を注ぐのが僕たちの仕事だよね、という想いを会社のみんなとも共有しています」

取材を終えて

これまでの知見と経験から確固たる軸をもつ小泉様。質問への回答をいただくたび、その言葉にこもった熱に感情を揺さぶられたことを覚えています。

当日ご同席いただいた広報の井上様は、今年転職されたばかり。地元で頑張っている企業で働きたいと探していた井上様の目に留まったのは、転職サイトの募集要項に書かれていた小泉様の熱い想いだったそうです。取材後、「小泉さんって、なんだか応援したくなりませんか?」と笑顔で話してくださった井上様もまた、この町に暮らす選択肢を変えるお一人だと感じました。


一部の人だけでなく、より多くの人が、家を所有しなくても心豊かな暮らしができる選択肢をつくる。

それは、小泉様がおっしゃる“まともな賃貸”だからこそ可能なのだと、取材を通じて確信しました。賃貸住宅は、分譲の戸建てやマンションといった理想の暮らしを手に入れるまでの仮住まい──そんな常識に真っ向から挑む小泉木材の存在が、この町の未来に確かな光を灯しています。

貴重なお話を聞かせていただいた小泉様、井上様、本当にありがとうございました。

なお、賃貸プロジェクトは現在も進行中です。
2026年2月には、横浜市都筑区川和台での新棟が募集開始予定。また、桜台と川和台に続き、第3弾・4弾も控えているとのこと。小泉木材の想いと取り組みが、さらに多くの町へ広がっていくことを楽しみにしております。高性能賃貸住宅〈Kizuki terrace house〉の最新情報はこちらから

小泉木材株式会社 / 株式会社Kizukiホールディングス

〒224-0057 神奈川県横浜市都筑区川和町101番地
https://kizuki-home.co.jp/

Kizuki Terracehouse 桜台 専用サイト

https://kizuki-home.co.jp/terracehouse/

 弊社納材商品

外壁:屋久島地杉
床:北海道産クリ節無フローリング(無塗装)厚み15㎜x巾75㎜x乱尺
窓(南面以外):UNILUX IsoPlus

チャネルオリジナルは、国内外の多様な建材のご提案を通じて、お客様の家づくりと真摯に向き合い、価値ある家づくりを支えるパートナーでありたいと考えています。それぞれの現場や想いに寄り添えるよう、今後も全力でサポートを続けてまいります。