「住む人の雰囲気」を細やかに、そして軽やかに表現する家づくり

京都の東山、伏見街道に面した敷地に『東福寺の家』があります。
今回、町家が所々に残るこのエリアの歴史や環境に呼応した建築の外観に、屋久島地杉をご採用いただきました。

こちらを手がけたのは、京都を拠点とする設計事務所STUDIO RAKKORA ARCHITECTS(スタジオ ラッコラ アーキテクツ)様です。2014年に事務所を設立し、シンプルな構成の中に無駄のないデティールを組み合わせた新築、リノベーション、家具の設計をなさっています。また2020年に「サンワカンパニーデザインアワード サンワカンパニー賞」を、2021年に「第7回福岡県木造・木質化建築賞 特別賞」、「大阪府住宅供給公社茶山台団地住戸改善事業 事業提案競技 最優秀作品」に選定されるなど、様々な分野で高い評価をされております。

今回、京都市中京区寺町に構えるオフィスにお邪魔し『東福寺の家』について共同代表の木村 日出夫様にお話を訊かせていただきました。

東福寺の家
EXTERIOR-屋久島地杉を用いたオリジナルルーバー

ご家族が代々住み続けてきた敷地にご夫婦とお子様ふたりが暮らす一戸建て住宅の計画。敷地の右手(下記写真右)に建つ旧母屋との調和を保つために、土間や通り庭*を設けた現代版の町家の設計がなされました。
*通り庭:京町家の玄関から奥の庭まで続く土間を「通り庭」と呼び、建物の奥や火袋の通気をよくし、延焼を防いだり新鮮な空気を通す役割を持たせている。

敷地に面する伏見街道は秋になると東福寺の紅葉を見物する人々で賑わうため、外壁には住まい手のプライバシーを考慮して木製ルーバーを採用。この基材に、屋久島地杉のデッキ材をお選びいただきました。

これまでの住宅の外壁には、京都の桧や杉を使用することが多かったと語る木村様。今回、過去ご採用いただいた屋久島地杉の耐候性の強さや経年変化の美しさに共感いただいたことから、同じ材で特注加工したオリジナルルーバーを実現いただきました。地杉特有の「野趣の風合い」を奥行75㎜、幅40㎜のルーバーに仕上げたことで、他の材では表現できない柔らかな表情になったと木村様は言います。

「屋久島地杉の節有って荒々しさもあるけど、そこが好きなんですよね。節無の材をルーバーにすると上品になりすぎてしまう印象があるけど、地杉の表情や節が表面に表れることで、柔らかな雰囲気になったのかなって思います。ルーバーは綺麗すぎたら古い街並から浮いてしまうけど、このラフな感じが竣工した時から伏見街道の街並みに馴染んでいるんですよね。」(木村様)

INTERIOR-木造の可能性-

土間から奥の庭まで続く「通り庭」を介して、建物全体が緩やかに繋がるようゾーニングされている内装。

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写真1枚目:玄関の役割を果たす土間、2枚目:こどもスペースから家全体を見渡す。

2階のこどもスペースは将来2つの空間に仕切れるよう1本の柱で分けるような構成に。さらに玄関からリビング、こどもスペースの間にスリット壁を設けたことで天井高7,200㎜の吹抜け部からの採光が空間全体に行き渡るよう設計されています。

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写真1枚目:吹抜けを介して見るこどもスペース、2枚目:天井から木構造が表れているダイニングキッチン。

このように木の構造部が床、壁材などのインテリアと同期したかのような構成になることで空間に開放感を生むとともに、その一見簡潔な構成があたかもその時々の暮らし方に応じて住まい手が何度でも手を加えていくことを、建築が許容しているようにも感じました。

最後に

家づくりについての質問に対して木村様から返ってきたのは「お客さんの雰囲気に似合う家を創りたい」というシンプルな答えでした。たしかに『東福寺の家』に住まうM様にご挨拶させていただいた時、この建築のように穏やかで、柔らかな印象を受けたことを思い返しました。

どんな事柄でも人の雰囲気に似合うものを作る、選ぶというのは、その人の暮らし方や生き方を理解し、考えて、アウトプットするというセンシティブな行為。それをSTUDIO RAKKORA ARCHITECTS様は「住む人の雰囲気」までも細やかに、そして軽やかに「建築」で表現していることを今回の取材で実感し、建築にかける愛というか、パッションに触れさせていただいたような心地になりました。

今回の取材に際しご協力いただいた木村 日出夫様、木村 淳子様、そして撮影にご協力いただきましたM様、
素敵な時間を誠にありがとうございました。

TEXT: Hieshima
PHOTO:STUDIO RAKKORA ARCHITECTS,Yano(Channel original)

設計・施工
STUDIO RAKKORA ARCHITECTS
604-0993
京都市中京区寺町通夷川上る久遠院前町671-1寺町エースビル2F東

建築情報
名称:東福寺の家
敷地面積:143.96㎡/建築面積:54.65㎡/延べ床面積:97.45㎡

採用商品
屋久島地杉 ルーバー材 無塗装 4面プレーナー40x75x3000
屋久島地杉 外壁 T&Gパネル V面取 ラフ(6枚/束)18x90x3000mm(1.62㎡/束)
屋久島地杉 チャネルサイディング 表面プレーナー無塗装15x91x3000
屋久島地杉 出隅用 表面プレーナー 無塗装15x97x3000
屋久島地杉 デッキ材 MIXグレード35x110x3000mm