広葉樹シンポジウム・啓発の森見学ツアー①

2020年9月8日(火)、北海道知内町にてウッドファミリー株式会社と合同で『広葉樹シンポジウム』、『啓発の森見学ツアー』を開催しました。

シンポジウムではふたつのプログラムを用意し、ひとつはウッドファミリー岡田社長による「広葉樹学入門講座」。そしてもうひとつは、講師に森林ジャーナリストの田中淳夫氏を迎え、「広葉樹は希望の林業になりうるか」をテーマに講演いただきました。

まず午前中は「啓発の森」の見学ツアーを実施。参加人数は30名までと限定し、またヒグマなど野生動物の安全対策にハンター2名にも同行いただきました。

北海道南部は、北海道と本州の林相を併せ持ち樹木の種類が非常に多いといわれています。知内町にある「啓発の森」は典型的な混交林で、道南の中でも樹種が多い里山です。
広葉樹、針葉樹を合わせて約20種類もの樹木があり、木にはわかりやすく名札がつけられています。
実際にウッドファミリーで製品として作られているものには、そのフローリングのサンプルがかけてありました。

見学ツアーには2名のガイドにご協力いただき、各樹種の特徴をはじめ森に関する様々なお話を伺いながら進行。
普段、製品で慣れ親しんでいた樹種にも別名があることを教わったり、加工後の姿しか見たことがなかった樹種が実際に生きた状態で立っているところを見て、とても感性を刺激されるツアーとなりました。

ここからは、シンポジウムでの岡田社長による「広葉樹学入門講座」の内容と合わせて書き進めてまいります。

タモ(英語名:アッシュ)の愛称は「スポーツの木」。弾力性が高く、かつては野球のバットやボートのオール、テニスラケットにホッケーのスティック、ソリなどに使用されてきました。また、比較的真っ直ぐな丸太が多く質の良い柾目材が取りやすいため、建具材にも多く使用されています。質感はナラに似た面が多数あり、保存性も高いため今後は更に使用頻度を高めていきたい樹種のひとつです。

センはハリギリともいい、その由来となったように樹皮表面にはいくつもの針のようなトゲがあります。これも森に来なければわからないこと。参加された方も驚かれていました。
またセンはほぼ日本でしか生育しておらず、日本固有種ともいえるそう。英語名もそのまま「セン」となっています。
愛称は「開拓の木」。吸肥力が高いため太い丸太が多く、かつて北海道開拓者たちはこの太いセンの丸太を目印に開墾されたといわれています。
資源量は適度にあるとされており、フローリングとしては安定供給が見込めます。

ミズナラ(別名:オオナラ/英語名:ジャパニーズオーク)の愛称は「広葉樹の王様」です。
落ち着いた色合い、十分な質感、重く硬く、王様の風格があります。洋酒の樽によく使われ輸出されてきた歴史があり、特に北海道産は「道産の楢(ナラ)」として世界ブランドにもなりました。
近年は広葉樹=ナラというくらい需要が高いため、資源の減少が懸念されています。優良材の質を保つため、一歩立ち止まり資源の成長を待つ勇気が必要かもしれません。

ウダイカンバ(別名:マカバ/英語名:バーチ)の愛称は「広葉樹の女王」。
心材と辺材の色合いが明瞭で、心材の赤い色合いがサクラに似ていることからカバザクラと呼ばれていたことも。過去には戦闘機のプロペラに使用され、現在はピアノのハンマーシャークに使われています。
北海道の中でも最も資源量の多い広葉樹で、安定供給が可能な樹種といえます。

こちらに写真はありませんが、シラカバ(別名:ガンビ/英語名:ジャパニーズホワイトバーチ)も北海道を代表する樹種です。愛称は「山のナース」。
心材部が少なくほとんどが白身で構成されています。樹皮や樹液などはアイヌ民族にならい利用されてきましたが、板材はあまり利用されてきませんでした。しかしその木目は美しく、広葉樹の中では極めて成長がはやいことが利点です。
以前ご紹介した白樺プロジェクトでは、フローリングはもちろん家具や化粧品や小物など、様々な製品を紹介し白樺を広めることに取り組んでいます。

ニレ(ハルニレ)(別名:アカダモ、エゾケヤキ/英語名:ジャパニーズエルム)
ニレは昔から別名で呼ばれ、「ニレ」として扱われてきませんでした。そこでついた愛称は「ニレはニレ」。
黄白色と淡褐色の美しい色合い、明瞭な木目は非常に評価が高く個性があります。ヨーロッパでは街路樹、また割れにくい長所を活かし太鼓の胴にも使われてきました。
また、水を吸い上げる力が強いことから水道管としても使われてきた歴史もあり、その特性から乾燥前は独特の匂いがあります。人工乾燥後、その匂いはなくなります。

クリ (別名:ヤマグリ、シバグリ/英語名:ジャパニーズチェストナット)の愛称は「縄文の木」。
縄文時代から、実は食料として、木は建築材として使われていました。タンニンが多く含まれるためカビや腐れが発生しにくく、耐水性も高いことが特徴。力強い木目をもち、はじめは白っぽい色合いから長い年月で茶色に変化していきます。硬さと弾力性を兼ね備え、線路の枕木にも使用されています。

これは柏の葉。柏餅を包んでいる大きさのイメージでしたが、自然にはこんなに大きい葉がなるのですね。

この他にも様々な樹種と触れ合いました。

森林見学はこのように密にならないよう間隔をあけました。離れた距離でもガイドさんの声が聞こえるようインカムを使用。この日は大変猛暑でしたが、水分もしっかり補給し安全に終えることができました。

写真を見るだけでは感じられない森の空気感をたっぷりと味わいながら様々なことを教わり、参加された方々も非常に満足していただけたようでした。
この啓発の森見学ツアーはしばしば行っているようなので、一度訪れてみてはいかがでしょうか。

実際に見て、触れ、匂いをかぎ、森の空気を感じることで得られる癒し効果はとても大きいものでした。
こちらの森に限らず、近くの森に出かけ自身の住む地域にはどんな木が生育しているのか、確認してみるのもおもしろいかも知れませんね。

シンポジウムに関しては、次の記事にて。