屋久島地杉を用いた「建築家の椅子展」再展示と販売が開始。そのレクチャービデオが公開されます。    

2019年に開催された「建築家の椅子展」から4年が経ち、建築家の方々にデザインされた椅子が販売開始。さらに、再展示が2022年1月10日から5月22日までの間、大阪TOWERZ CAFE GALLERYで行われています。それらを記念し、GENETO GROUP家具レーベル「pivoto」のYouTubeチャンネルにて本展示に参加した建築家の皆様によるレクチャービデオが公開されます。

全6回のレクチャービデオの最終回に、発起人であるGENETO GROUP 山中悠嗣様、帝京大学 三竝康平先生、チャネルオリジナル 代表家山がゲスト出演し、司会進行をOJAR 大脇淳一様が務め、それぞれの屋久島との出逢いや椅子展にかけた想い、そして未来を見据えた森の取り組みについて語っていただきました。

|建築家の椅子展と、その始まり

椅子は家具の中でも特別な存在であり、古今多くの建築家が挑み様々な名作を生み出してきました。「建築家の椅子展」では建築、プロダクトデザインを手がけるGENETO GROUP様が提案する「現代における椅子の可能性」をさまざまな建築家が、日本の代表的な木材でありながら、家具には使われることのなかった杉や檜を用いて表現します。

2019年、GENETO GROUP代表の山中こ~じ様より本展示のお話をいただき、テーマである「デザイン」×「建築家」×「国産材の有効活用」とチャネルオリジナルの屋久島地杉プロジェクトが合致。椅子の素材として屋久島地杉を提供させていただくこととなりました。そして、建築家の大脇様と大学で地方創生・活性化の研究をされる三竝先生とゼミ生のみな様にご協力いただき、産学共同で「建築家の椅子展」はスタートしました。

|レクチャービデオで語られた、それぞれの屋久島

2015年に始まった屋久島地杉プロジェクト。そのきっかけとなった、ある森との出会いを家山は次のように語ります。

家山:18年前にカナダのUBC大学のリサーチフォレストを訪れて、自然林と産業林が共生しているのを目の当たりにしたんです。自然林の一部を産業用に伐採し、その後はプロのフォレスターが自然条件や生態系に合わせて丁寧に植林を行い、生存競争を経て立派な森になっていく。自分の林業のテーマとして、二つの森をパラレルに保護・維持していくことを考えるようになりました。ある機会に屋久島を訪れ、半径100kmの島に世界遺産として保護されている自然林と、その陰に隠れて植えっぱなしになった産業林の姿を見ました。自分が林業に求めていたものが目の前に現れたので、真剣にこの課題に向き合うべきだと思いました。

(リサーチフォレスト 左:倒木もそのままで自然に任せる自然林。右:植林し、木を循環させる産業林)

屋久島地杉プロジェクトは、樹齢2千年を超える縄文杉をはじめとする“人の保護が必要な自然林(屋久杉)”ではなく“人の手を加えないと守れない産業林(屋久島地杉)”の復興を目指し、さまざまな製品として活用しています。 展示の開催に向けて、屋久島の現状を知っていただくためにGENETO GROUP 山中悠嗣様、大脇様、そして三竝ゼミの皆さまに島を訪れていただきました。

三竝先生:山中さんから屋久島の杉を使った椅子展を開催するというお話を伺って、これはゼミ生がデザインと屋久島地杉の流通について一緒に学べるはずだと思い参加を志願させていただきました。初めて家山社長にお会いした際に「屋久島のことを知るには屋久島に行くしかない」と伺い、ゼミ生を連れて屋久島へ現地調査に行きました。雨の降る中、屋久島の森を探検し、自然林と屋久島地杉の森の違いを目の当たりにしました。

島ではゼミ生の皆さまに屋久島加工センターや町舎を見学いただき、さらに加工センターでは屋久島地杉のオガ粉によるアロマ麻袋を作成し、展示会にて販売いただきました。

三竝先生:展示が始まって2000名ほどのお客様にご来場いただき、その中には特別支援学校の生徒さんもいらっしゃいました。「自分が屋久島に行くのは大変だけれど、地杉の香りから屋久島を感じれてとても嬉しかった」と感想をいただき、とても嬉しかったんです。同時にやってきてよかったなと心から感じました。当時、椅子展に参加したゼミ生や、訪れた方々の心の片隅にはきっと屋久島地杉が今も残っています。これからもこういった取り組みは続けていきたいと思っています。

本展を主催するGENETO GROUP 山中悠嗣様は屋久島を訪れてから、自身の建築に屋久島地杉を提案する機会が増えたと言います。

山中様:建築家の椅子展は兄の山中こ~じがデザインし、東京からバックアップするという形で参加したのがきっかけです。これまで林業の現場に関わることはなかなかありませんでしたが、屋久島を訪れて以降、山と関わることが増えてきたんです。最近、屋久島地杉をご提案する機会が増えて「屋久島に杉があるの?」「屋久島で杉は伐っていいのか?」とよく訊かれるんですが、その度に「実際に屋久島で見て聞いてきました」と言うようにしています。世田谷の住宅にデッキ材を採用しましたが、柔らかくて温かみがあるとお客様にも喜んでいただきました。まだまだ屋久島地杉というと驚かれますが、そのインパクトもいいのかなと思っています。

|森の再生への取り組み

屋久島では加工から製材の行程が整い、ようやく産業林の姿が見えてきたと家山は語ります。


家山:2018年から島内で「苗木推進協議会」を島内の林業関係者全員で立ち上げ苗木の育成を始めました。純粋な屋久島地杉を育てるために標高1700mの山から、挿し木を切り、太い枝から種を取ってふるいにかけて育てる。試行錯誤を繰り返しながら、3万本の苗木を植林することができました。今ある地杉を自分の代で切って、しっかり手入れをされた苗木が、より良質な木材となることを願っています。

屋久島地杉は今、島内の連携を含め様々な形で全国に広がりっています。このプロジェクトに込めた「森は切るためだけにあるのではない」という森への想いが、未来を見据えた試みへと繋がっています。

|デザインと林業の未来

林業の現実に向き合い、異業種のアイデアを共有しながら椅子という形へ消化していく。展示に並んだ素晴らしい作品の数々は、循環の中にある産業林への希望であり、屋久島の森の息吹を感じていただけるそんなメッセージに捉えていただければ幸いです。

このプロジェクトに参加できたことを心から感謝し、皆さんと共有させていただく機会になればと思っております。 展示を訪れる機会がございましたら、ぜひそのデザインと屋久島地杉の風合いを五感で感じていただきたいです。 (Hieshima)

●「建築家の椅子展」
2022年1月10日~5月22日  Open:10:00-18:00/Close:毎週水曜日                           会場:TOWERZ CAFE GALLERY (大阪府大阪市中央区淡路町3丁目6-3 御堂筋MTRビル1階)

●「建築家の椅子展」の椅子の販売について
建築家達がデザインした椅子はpivoto様より1脚から製作販売が開始されております。カタログ、椅子の価格表へのお問い合わせはinfo@geneto.neまでご連絡くださいませ。

●プロフィール
GENETO GROUP: 建築設計を担う“GENETO Architect’s”と家具デザイン/制作を担う“pivoto”、デジタル系制作を担う“pivoto fabrication”、映像制作を担う“LENS G”に加え、アーティスト支援やアートホテル運営を担う“GENETO ART FOUNDATION no.2”、消滅可能性都市に対する研究を行う“G8研究所”から構成されたグループ。

大脇 淳一:京都を拠点にする建築設計事務所OJAR代表。建築の設計を中心に、プロダクトデザインや地域・文化活動、産学官連携の企画、立案を手掛ける。

三竝 康平: 帝京大学経済学部経営学科講師。中国経済をはじめ、イノベーションの社会実装、産学官連携プロジェクトを通した地方創生、大学発ベンチャーやアントレプレナーシップ教育の新しいあり方に関する研究に取り組む。