緑に囲まれた小さな家『岳見の家』

すまいる愛知住宅賞 (平成24年度) 名古屋市長賞 岳見の家
中部建築賞 入賞 平成24年










この住宅は、定年を迎えたご夫婦がゆっくりと過ごす終の棲家です。敷地は、ゆるやかな不陸があり緑が点在する閑静な住宅地にあります。
法的に厳しい条件(建蔽率30%・壁面後退2m・緑地率30%)が魅力的なデザインのヒントとなり、そこから、「住む人の居場所・居心地のよさ」を最も大切なテーマとしてつくり上げていった家になっています。

街の修景・住宅のたたずまい

「扇型の形状」と「傾斜地のゆるやかな勾配」という敷地条件に素直に従った設計から、三次元カーブをえがく棟梁の形が生まれました。建物は2階建て。
傾斜地に埋め込んだ地階(RC造)と米杉板張り外壁(チャネルオリジナル)の1階(木造)が雑木林で覆われており、美しい風景をつくっています。緑の前庭は道に開かれ、通りかかる人の視線を快く導きます。
建築をみせるというよりは、街のなかにそっと豊かな空白をつくるような修景を志しました。敷地の環境を活かして欲しいという建主の希望をかなえられたと思います。

緑の中に浮かぶレッドシダー張りの外壁が映えています。

アプローチは緑のトンネルをくぐって入るようになっています。

玄関から左を見ると、カーブした壁沿いに陽光が入り込む室へと導かれます。

寝室は光と緑につつまれたテラスへとつながっています。
床の杉板フローリング(チャネルオリジナル)がいいアクセントなっています。

階段上は南の庭の緑が迎えてくれて、上がる気持ちを軽やかにしてくれます。

鋭角に伸びたリビングの先からは木漏れ日が入り、左側の連窓からは隣家の借景が望めます。一日の生活をこの緑と光につつまれた空間で暮らすことができます。
建て主からは、「幸せな毎日をすごしています。」と嬉しい言葉を頂きました。
床は杉板フローリング、天井は構造の垂木梁が表しとなっていて、木の優しさと風合いにつつまれています。

リビングの外には、小さなカフェテラスがあります。南の木々の中に張り出した癒しの空間です。
シャープな突端は、地階のテラスと浴室・1階のリビングの開口とカフェテラス・・・と屋外とのふれあいの持てる場所となっています。

敷地の形状、周辺の環境との調和に配慮したプランニングに心がけました。

小さな家の魅力・自然の心地よさと家族の親密さ

敷地の中に建てる住居を小さくすると、周囲に空白が生まれ、室内から外部への抜けやおおらかな開放感へとつながります。その空白に緑があると、中に住む人は清々しさや安らぎを感じていっそう豊かな時間を過ごすことができるのでしょう。

この小さな家には、こうした体験があふれています。

リビングの造作ベンチに腰掛けると、窓辺に寄り添う庭木から木漏れ日がふり注ぎます。連窓の外には、敷地内の庭木、隣家の木々、そして坂道の向こうの空へと自然が広がっています。南突端の窓からは、柔らかな陽光が漆喰の壁沿いに流れこんでくる…など、小さな家だからこそ生まれる魅力があります。空間の小ささそれ自身も、住む人を包みこんで温かいです。

家族が互いに心地よさを分かち合い、親密さをさらに深めていけるような家になればと思っています。

■建築概要「岳見の家」
用途:一般住宅
建築場所:名古屋市瑞穂区
敷地面積:165.05㎡(50坪)
延床面積:83.99㎡(25坪)
構造:RC造(地階)+木造(1階)
階数:地下1階/地上1階

構造設計:伊藤構造計画工房
写真家:鈴木研一
施工:株式会社 前田工務店
竣工時期:2010年9月

■ご採用商品
外装:ウイルウォール T&G Panel オイル系塗料(黒、現場塗装)
内装:杉板フローリング t24 w165


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